『出口のない海』で学ぶ「靖国とは?」2006年01月10日 00時02分

 佐々部監督の『チルソクの夏』の東京応援団長を務めた安倍晋三官房長官が「報道ステーション」に生出演していた。靖国問題についてもいつもの持論を語っていた。「小泉首相が言ったように、政治家として国民として、国のために命を落とされた方々のご冥福を祈るのは当然ではないか。その気持ちは持ち続けたい」とのことだ。このことに対して異議を唱える人はあまりいないのではないかと思う。問題は、戦争責任があるとされる人々を神として祀るべきかどうかということにあると思うが、このことに関する説明は小泉さんからも安倍さんからもされていないように思う。政教分離の原則があるからするわけにもいかないのだろうが。
 同じく佐々部監督により映画化が進められていて今秋公開予定の『出口のない海』(横山秀夫原作)の原作本(講談社)のp.226に、主人公・並木と同じ大学出身の北の次のような言葉がある。
「特攻は最高の名誉だ。神になれる」
「息子が特攻で死ぬ。その事実をおやじとおふくろに叩きつけてやる。神になって村中の人間を土下座させてやる」
 このセリフは靖国に祀られている霊がどのような存在かを分かりやすく説明していると思う。戦犯とされている人の霊についても同様だ。このことを踏まえた上での靖国参拝についての議論があまり為されていないように、いつも思っている。