『東京家族』の評価は2073年までお預け2013年01月29日 09時23分

 昨日観た山田洋次監督の『東京家族』(2013)について考えています。この作品は小津安二郎監督の『東京物語』(1953)の評価を、また一段押し上げたのではないかなと思います。では『東京家族』(2013)の評価はどうであろうかと考えてみた時、それは60年後に誰かにより作られて2073年に公開されるであろう次回作まで待たなければならないと感じています。

 量子力学の遅延選択量子消去実験の結果によれば、いま得られた実験データの解釈は未来に行われる実験への遅延介入の影響を受けるのだそうです(グリーン『宇宙を織りなすもの・上』p.321-328)。量子の絡み合いがそのような不思議なことを引き起こすのですね。聖書のヨハネの福音書においても紀元30年頃のイエスの活動は、紀元前の旧約の時代やイエスより後のパウロたちの時代、そして現在の私たち読者の時代と互いに絡み合っています。

 『東京家族』(2013)は『東京物語』(1953)と比較すると見劣りがしてしまうかもしれませんが、60年後には評価が高まるのではないかという気がしています。少なくとも2012年の東京の風景をしっかりと記録して2073年の次回作への架け橋となったという点においては、高く評価されるべき作品となったことと思います。

 60年後に『東京家族』(2013)の評価が高まった時には、『東京物語』(1953)の評価はもう一段押し上げられることでしょう。つくづく『東京物語』(1953)はすごい作品だなあと思うことです。そして紀元30年頃のイエス・キリストの十字架の出来事が脈々と伝え続けられていることも、すごいことだなあと思うことです。