中村ゆりさんの眼に恨(ハン)の奥深さを見た気が…2007年06月12日 00時37分

 土曜日の昼、川崎チネチッタで「パッチギ LOVE & PEACE」を見ました。暴力シーンは嫌いですが、それを除けばとてもいい映画だったと思います。見て良かったとつくづく思いました。
 一番心に突き刺さったのは、中村ゆりさん演じるキョンジャが差別的な発言をする相手を見るときの眼でした。何ヵ所かありましたが、どれも心を揺さぶられました。一言で言えば、怒りを含んだきつい眼と言えるのでしょうが、悲しみも含んだ表情であり、本人だけでなく民族全体の怒りと悲しみを含んだ、とても深い表情の眼と感じられ、秀逸なシーンであったと思います。演技の経験の少ない中村さんからこの眼の表情を引き出すのに、いったい井筒監督はどれだけ彼女を追い込んだのか、或いはあっさりと引き出すことができたのか、私には分からないですが、それは中村ゆりさん自身が在日韓国人であるが故にできたことなのだと思いました。
 中村ゆりさんが在日だということは朝日新聞の記事で知っていたのですが、このブログを書くために確認のためネットで検索していたら、思わぬことも分かりました。南果歩さんも在日だったのですね。今の今まで知りませんでした。これまで見た私の日本映画No.1は「ニライカナイからの手紙」(「夕凪の街 桜の国」の試写を見て「夕凪」がNo.1になりましたが、公開された映画では今のところ「ニライカナイ」がトップです)であり、母の娘への愛情に満ちた声が切々と心の奥底に響くこの映画のクライマックスの声の主の南果歩さんが在日だったんだということに妙に納得してしまいました。韓国・朝鮮の民族性が論じられる時によく出てくる「恨(ハン)」というものの奥深さを、中村ゆりさんの眼と、南果歩さんの声に見たような気がしました。

コメント

トラックバック