『あなたへ』2012年09月03日 20時58分

 先週、静岡で家族と観て、今日また姫路で観ました。静岡の母は、この映画がだいぶ気に入ったようで、誘って良かったと思いました。私も静岡で1回観ておいたことで、今日はより一層私なりの理解が深まったので良かったです。以下は完全にネタバレです。

【ネタバレ注意】

 きょう2回目を観て、キーワードは「時間が止まる」だと思いました。以下、この映画を「時間が止まる」の観点から私なりに整理してみます。

 刑務官が職業の高倉健さんは、受刑者の時間は止まっていると言いました。そして、田中裕子さんと結婚する前、死んだ受刑者に心を寄せたままの田中さんに、それでは田中さんの時間も止まったままだから、忘れるよう勧めました。

 実は、健さんも妻の田中さんに先立たれて以来、時間が止まったままになっていました。田中さんとの思い出はセピア色になっていました。しかし、旅を続けるうちに色が付いて来ました。「時間を止めていてはいけない」と死んだ田中さんが気付かせてくれたのですね。そして田中さんの故郷の写真館で、時間が止まったままの少女時代の妻の写真を見て完全にふっきれ、妻の遺書も風に飛ばしてしまうことができました。

 さて、この映画には、もう一組、時間が止まったままの夫婦がいました。佐藤浩市さんと余貴美子さんの夫婦です。余さんは佐藤さんの手書きのメモの筆跡を見て、すぐにそれが夫が書いたものだとわかりました。佐藤さんが海で遭難して以来、余さんの時間も止まったままになっていました。そんな余さんが佐藤さんの手書きのメモを見て以来、心が激しく騒ぎました。狭い港町の中で時間が止まっていた余さんの中で、外界の夫と連絡を取りたいという激情を抑えられなくなりました。刑務官の健さんは、それを敏感に感じて、連絡の鳩の役を演じることにしました。

 「時間を止めてはいけない」というメッセージがこの映画に込められているように私は感じましたが、もしかしたら、製作者側はそんなことは考えていないかもしれません。深い映画ですね。