試論:デジタル世代は見た映画を脚本に還元する?2006年10月01日 21時53分


 横浜赤レンガ倉庫で開催中の「星野富弘 花の詩画展」を見てきた。
 富弘さんの詩画は絵はもちろん良いが、やっぱり詩が素晴らしいので、展示されている百余点の詩画の詩を全部じっくりと味わってきた。しかし悲しいかな、読むそばから前に読んだ詩を忘れてしまう。詩画集だけではなく、詩集もあるといいなと思っていたら、出口のショップでしっかり「全詩集」というのを売っていた。やっぱりあるんですね。それで、よし買おうと思い、パラパラとめくった。しかし明朝体で印刷されたその詩集は、あまり心に響いてこない。やっぱり肉筆の詩画でないと富弘さんの優しさが伝わってこないのだ。活字から感動を得るには想像力をかなり膨らませる必要がある。
 話は変わるが、最近、これから撮影されるある映画の台本を目にする機会があった。活字で書かれた脚本からは、最終的にどのような映像になるか、ほとんど見えてこない。このテキストデータとしての脚本からスタッフとキャストはイメージを大きく膨らませて映画にしていくのだということが良く分かる。
 さてそこで思ったのは、最近のデジタル世代が、説明が少ない映画だと良く分からないと言って著しく低い評価をくだすのは、彼らは見た映像と音声をもしかしたら活字のテキストデータに還元しているのではないか、ということだ。「カーテンコール」と「ALWAYS 三丁目の夕日」、「出口のない海」と「男たちの大和」のどちらとも分かりやすい後者のほうが若者には支持が高い。想像を膨らませる余地が多い前者を、デジタル世代はどのようにテキストデータとしての脚本に還元したら良いのか分からなくて戸惑い、投げ出してしまうのかもしれないな、と思った。もしそうなら、分からないものは分からないままでイメージを膨らませることを楽しめば良いと思うのだが。
 だから私は解釈を限定してしまうノベライズ本というのが好きではありません。

回転(回天?)2006年10月03日 08時27分


 腕時計の文字盤が少し回転してしまった。
 天が回ったような変な感じがする。
簡単に直るのだろうと思い、時計屋に持って行ったら、たぶん文字盤を固定している金具が破損しているので、修理するなら時計を預けてもらう必要があるし、費用も少々掛かるかもしれないと言われた。
 「じゃあ、いいです。」と言って時計屋を出て、このまま使い続けることにした。
 私の人生の針路が微妙に方向転換しつつある予兆のような気がしないでもない。
 願わくば私の望む方向に進むよう祈るのみだが、それは神のみぞ知る、だ。

「しかし、わたしの願うようにではなく、あなたのみこころのように、なさってください。」(マタイの福音書:26章39節)

今夜のNHK「その時歴史が動いた」2006年10月04日 08時17分

戦火をこえた青春の白球
~学徒出陣前 最後の早慶戦~

『出口のない海』の時代背景を知る上で佐々部映画ファンは必見ではないでしょうか。

22:00~22:43 にNHK総合で放送されます。

http://www.nhk.or.jp/sonotoki/2006_10.html#01

泣けた2006年10月05日 06時19分

 昨晩のNHK「その時歴史が動いた」を見た。
 戦後わずか3ヶ月で復活早慶戦が行われたという場面で泣けて仕方がなかった。『出口のない海』の並木浩二のように二度とグラウンドに戻って来ることができなかった者が数多くいたであろうことに。
 番組では戦死した若者についてはほとんど触れていなかったので泣ける作りの番組ではないのに、泣けた。『出口のない海』を見たおかげだ。
 このように映画をたくさん見、書物をたくさん読み、音楽をたくさん聞き、知識や情感を豊かにしていくことが大事なのだなと、今さらながら感じた。心の豊かさが育たないと分かりやすい映画にしか感動できない人間になってしまう。

http://www.nhk.or.jp/sonotoki/2006_10.html#01

はやい2006年10月07日 13時54分

さすがに某誌は対応が速い…

Manuscript under consideration 6th October
Manuscript submitted 5th October

『夜のピクニック』2006年10月07日 20時38分

 夕方、渋谷で『夜のピクニック』を見た。
 途中、「おいおい、勘弁してよ」というようなシーンがいくつかあり、先週『フラガール』を見に行った時のように疲れた状態だったら途中で寝てしまったかもしれないが、今週は体調が元に戻っていたので最後まで目を開けて見ていられた。
 そのような中盤であったが、終盤は良かった。
 校庭に置いてある"START"と"GOAL"が表裏一体となったゲートがなにやら存在感を示していたように思う。何かの終わりは常に何かの始まりであり、それは高校生だけでなく我々もその中を生きており、全ての世代に向かって我々には常に新しい可能性があるのだというエールを送っているのだと受け留めたいと思った。

ハン・ソッキュの『涙そうそう』が見てみたいような2006年10月08日 21時10分

 きょうの夕方は川崎チネチッタで『涙そうそう』を見た。
 兄と妹との微妙な関係が良く描かれていたのではないかと思う。映像もきれいで見ごたえがあった。兄がああいう感じでああなるのは私としてはちょっと不満で、そうなるなら『八月のクリスマス』のハン・ソッキュ風になったら良かったのではないかと勝手に思った。
 そんな風に思っていたら、ハン・ソッキュによる『涙そうそう』が見てみたくなった。主人公が冒頭にバイクに乗っていたり、女性に対して不器用だったり、『涙そうそう』と『八月のクリスマス』は少し似ている点があるではないか。
 前に『出口のない海』の海老蔵さんの脱力した感じが良いと書いたが、私はハン・ソッキュの役柄も『接続』や『シュリ』のような「仕事ができる男」風の役より、『八月のクリスマス』の脱力した主人公のほうが遥かに好きだ。

ユネイテッド・シネマ豊洲2006年10月10日 22時51分

 昨日、ユネイテッド・シネマ豊洲へ行き『出口のない海』(5回目)を見た。上映前に佐々部監督の舞台挨拶があり、チル友のTさん、Iさん、Hさんも来ていた。監督さん、お疲れ様でした。
 ユネイテッド・シネマ豊洲はオープンしたばかりの劇場で快適だった。まず座席のひじ掛けが隣の人との奪い合いにならないよう、ちゃんと2人分の広さがあるのが良かった。前方の席との距離も十分とってあり、私の足の長さなら伸ばしていられるのが楽で良かった。
 映像と音声はもちろん申し分なかった。主人公の並木が新しく開発された特殊兵器への搭乗を志願する意志表示としての二重丸を描くシーンで鉛筆のカリカリという乾いた音がハッキリと聞こえた。様々な思いを抱き熱い血が通う人間の指先からこのような乾いた音が冷たく発せられるという対照的なコントラストが、これからの主人公の運命を予告しているようだった。音響があまり良くない上映会場では味わえないものが味わえ、とても良かった。

王子ホール2006年10月14日 07時21分

 銀座の王子ホールで行われた9/27の加羽沢美濃さんコンサートと10/12のジョン・チャヌさんコンサートに行ってきた。どちらもとてもいいコンサートだった。王子ホールは今年に入って3回行ったが、私もこのホールの雰囲気がすっかり気に入ってしまった。
 9/27の加羽沢美濃さんのコンサートは華やかだった。近藤嘉宏さん(ピアノ)、松本蘭さん(ヴァイオリン)、寺田達郎さん(チェロ)、近藤亜紀さん(ピアノ)と出演者多数で、アンコールのフィナーレはさらにゲストの石井はるかさん(ソプラノ)も加わり、出演者全員での「ウィーン、わが夢の街」は本当に素晴らしく華やかだった。
 10/12は、またまたジョン・チャヌさんの魂の演奏にしびれた。ピアノ伴奏の矢島吹渉樹さんもすごいピアニストだ。吹渉樹(ふぶき)さんは気合が入ってくると姿勢が低くなり、楽譜を下から見上げるような姿勢になる。それが獲物を狙うヒョウのような感じで、研ぎ澄まされた精悍な雰囲気を放っていて、とてもカッコいい。
 ジョン・チャヌさんはヴァイオリンとの一体感が素晴らしい。もはやヴァイオリンを弾くというよりはヴァイオリンを持ったジョン・チャヌさんが音だけでなく霊的な波動も体内から放っているかのようだった。アンコールの最後は「愛の讃歌」だった。夢中で拍手し、気付いたら時計の文字盤がこんなに↓回転していました(笑)

シミュレーション2006年10月15日 08時11分

 某誌に投稿した論文は査読に回らなかった。腹が立ったが、考えてみれば当たり前か。3年前に亡くなった先生の研究グループが97年から2002年までに10億円の予算を使って研究しても解明できず、私もその時の実験結果を基にこの5年間はああでもない、こうでもないとあれこれ考えを巡らし、1年前にようやくある突飛なアイデアから真実の一端をたぐり寄せることができ、最近になってそれを支持する新たな実験結果を得たところなのだ。それほど苦労してようやく見えてきたことを、この問題を真剣に考えたことがない人が、すぐに理解できるはずがないのだ。この現象はこれまでの常識では考えられないことなのだから、なおさらのこと理解できないであろう、というか俄かに認めるわけにはいかないのであろう。
 どうやったら認めてもらえるか。それにはやはり計算機シミュレーションで再現するしかないのかもしれない。私は実験はある程度得意だと自負しているが、理論や計算にはあまり強くなく、計算結果を論文にしたことは一度もない。だから計算には二の足を踏んでいたが、事ここに至っては自分で本格的な計算機シミュレーションに取り組まざるを得ない。人に頼んでもなかなか進みそうもないからだ。
 少し調べてみて分かったことは最近は企業が使いやすいソフトを作って市販しており、この週末に体験版をダウンロードして使ってみたら、なかなかいい感じだ。だいぶ前に人からもらったプログラムを改造して計算しようと思っていたが、それよりも早く目的を達成できそうなので、月曜日になったら早速製品版を注文してみようと思う。