11.奇妙な7章も「ことば」で解決2012年06月23日 07時29分

「焼けなかったロゴス ~舞台裏から観たヨハネの福音書」11

 ヨハネ7章は奇妙です。イエスが「公にではなく、いわば内密に上って行かれた」(10節)とは、どういうことでしょうか。ここは私を最も悩ませた箇所の一つです。しかし、ヨハネの福音書は一貫して「ことば(ロゴス)」で解釈すべきと気付いてからは、ほぼ解決しました。

 7章1節でイエスは北のガリラヤにいました。この時の舞台裏の旧約時代は、北王国が滅亡した直後でした。北王国は、「弟子たちの多くの者が離れ去って行き、もはやイエスとともに歩かなかった」(6章66節)と書かれた時点で滅亡しました。そして、聖書の北王国に関する記述も、列王記第二17章23節の「こうして、イスラエルは自分の土地からアッシリアへ引いて行かれた。今日もそのままである。」という記述をもってプッツリと途絶えます。つまり、聖書の「ことば」であるイエスは、北にいる限りは公的には存在しないことになってしまいました。

 7章4節でイエスの兄弟たちが、「自分から公の場に出たいと思いながら、隠れた所で事を行う者はありません」と言っている「隠れた所」というのは、滅亡後の北王国のことです。もはや「公の場」は、まだ滅亡していない南王国しかありませんでした。ですから、10節で「公にではなく、いわば内密に上って行かれた」というのも、聖書にはもはや存在しない北王国から南王国に移動したことを、このように表現したのでしょう。

 14節で公に姿を現した7章のイエスは、預言者イザヤ・ヨエル・ミカが預言した神の「ことば」のことです。このように、ヨハネの福音書は、1章1節の「初めに、ことばがあった」の「ことば(ロゴス)」で一貫して解釈できるようになっています。
(続く)

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