『単独行者』~新・加藤文太郎伝~2010年11月11日 10時09分


 単独行の加藤文太郎が主人公の『孤高の人』(新田次郎・著)を初めて読んだのは、確か中学生の頃でした。当時、山歩きが好きだった高校生の兄がこの本にほれ込んでいた影響で私も読み、中学生ながら夢中になって読みました。何年か前に兄は、この『孤高の人』が兄の読書人生の歴代ナンバー1だと話していたので、たぶん今でもそうではないかと思います。

 そんなこともあって、この加藤文太郎についての新しい小説『単独行者』(谷甲州・著)が出版されたことを知り、是非読みたいと思っていました。なかなか時間が取れないうちに11月になってしまいましたが、今月に入ってから少しずつ読み始め、一昨日読み終わりました。いや~、面白かったです。そして勇気をもらいました。

 登山と言えば荷上げ人夫や案内人を雇い、パーティーを組むのが当たり前だった昭和初期、単独行は危険だから止めるべきだと批判的な目で見られて加藤文太郎は悩みます。しかし、悩みながらも加藤文太郎は単独行を貫きました。『孤高の人』の記憶は曖昧ですが、『単独行者』の方がこの加藤の苦悩を色濃く描いていると思いました。

 私自身も従来の常識になじめない性質であると、この頃つくづく思います。金属の研究をしていた時もそうでしたが、聖書を深く学んでいる今も、特に「ヨハネの福音書」においては、従来の解釈と私の解釈は一致しません。へそ曲りだから敢えて常識と違うことを考えるのかと思っていましたが、どうもそうではなく、私は自然と他と違うことを考える傾向にあるようです。しかし、それだけに理解されないことも多いです。

 そんな私にこの『単独行者』は多大な勇気を与えてくれました。感謝です。

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